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【 たか歩き/026 】北播磨シンポジウム~北播磨のみらい、農業のミライ(2021年2月27日)

地域おこし協力隊がカメラ片手に多可町を歩き、その様子をリポします

うるう年とひでお

にわか雨は車窓に砕け、列車の進行方向に逆らって、透明な畝になります。でも、それも音もなく消える。
トンネルに入れば雨は静まり、車内が一瞬、陰におおわれる反動でしょう、手元でスマホの液晶がまばゆく、「2月29日」の小さな文字も浮いてきます。
そんな立体感が消えたのは、列車がうねうねと曲がるトンネルを出てすぐでした。速度と一緒に車輪の音が抜け、また雨粒が、待ち構えていたかのように、硝子にワッとぶつかります。
プシュー……っ
阪和線は日根野駅で止まり、列車の連結を待つこと数分 ―― 


 

北播磨のみらい、農業のミライ


こんばんは。たかおこし隊の黒川です。

2月も終わりですね。この時期になると、数年前に電車に乗ったときの記憶がフラッシュバックします。そういえば……多可町に来て4ヶ月。この間、1度も電車に乗りませんでした。
パニック障害を患うほど電車やバスが苦手だったので、車生活は気持ちが楽。風も雨も気にすることなく行き来しています。

こないだは加東市に出かけ、「北播磨地域 未来フォーラム~子どもたちに残したい北播磨」(2021年2月20日)に参加しました。


 



緊急事態宣言の発令により、開催が危ぶまれたそうですが、開催地を北播磨県民局に替え、会場を複数に分けることで決行。
地域を盛り上げた学生や団体の表彰や専門家によるスピーチ、グループ討議が行なわれました。

 

5つのテーマでグループ討議

グループ討議は「交流」「生活」「文化」「環境」「産業」と5つのテーマがあり、 ぼくが配属(?)されたのは最後の「産業」。
どうやら参加申し込みの時点で自らテーマを選んだらしく(また覚えてません)、参加者も自治体の担当者や研究者、ベテラン農家など、地域産業に対する持論と経験をお持ちの方が、ずらり。
産業ベイビーのぼくは
気後れしましたが、「なんのために来たのか!」とカツを入れ、前のめりに姿勢を変えました。

まずは2人1組でミーティング。
真四角の付箋をメモ帳にテーマやポイントを炙り出します。
 


 

集まったテーマやポイント

・ブランド価値
・農業の仕組み
・副業としての農業
・IT化
・スマート農業
・人口減少
・グローバル化
・大規模化
・外国人の協力
・インフラの老朽化と建て直しの難しさ
・後継者不足
・温暖化の悪影響
・新たな品種の開発や栽培
・天災に強い農業
・レジリエンス(復元力)
・交通や流通網の再整備
・電気自動車
・多様性
・他地域との連携
       など


 

大規模化×個別化・個性化

グループ全体のミーティングで話題になったのが「農業の大規模化」と「ちいさな農業の推進」。
ぼくはよく知らなかったのですが、農業の後継者不足や高齢化対策として、いまは別々の農地や農家を再編成し、大規模化を進める施策があるそうです。

これに対し、「農業にしてもグローバル化は加速する。国内の農業を大きくしたところで、アメリカや中国の広大な農地と農家には絶対に敵わない。日本の農業は副業や兼業も可能な仕組みに変え、個別化・個性化してこそ未来が拓ける」という意見もありました。

大規模化と個別化・個性化。そのどちらかを選ばなければならないのか、掛け合わせたり、いいとこ取りをしたりはできないのか……農業に留まらない話だと思いながら、せっせとメモしました。


 

うるう年の日根野駅

車窓に砕ける雨音を聞きながら、スマホ液晶に表示された「2月29日」をぼんやり見ていました。
今年はオリンピックかぁ。
ひとりごちたのは日根野駅。車両を連結するため、停車した阪和線の中でした。

目の前は二人掛けのベンチシートで、和歌山駅からずっと、その席と、ぼくの横が空席。がらんとしたボックスエリアに日根野駅で、中年の夫婦、それと男の子が座ったのです。
二人掛けに三人。窮屈そうなので「こちらにどうぞ」と声をかけようとしたとき、ハッ……っと、ひるみました。
シートの真ん中、男と女に挟まれていたのは子どもではなく、人形だったのです。男の上半身ほどもある、鳥打帽子をかぶせられた洋人形。
「濡れちゃったねぇ」と女がハンカチを出し、人形の目元を拭います。
ぼくには滴や涙が見えなかった。でも、それこそ錯覚だったのかもしれません。
視線を感じたのでつられると、男がこちらを見ていました。目が合ってすぐ、男は伏し目になり、わずかに前屈み。それは動き始めた列車の振動によるものではなく、あきらかに会釈でした。ハンカチの女と人形を守護する、悟った意識による黙礼です。その膝で真四角の鞄が揺れています。持ち手は照り、艶があり、革にしてもよく馴染んでいるから、きっと男性に愛用されてきたのでしょう。
「次のね、その次で降りるよ、ひでお」
女が男の子の手を取り、そう語りかけたとき、ガた……ッ。電車が音を立てて揺れ、頭からずり落ちた人形の帽子はつばを床に当て、振動する列車を揺り籠のように、ぐるりと回りました。

ひでおの帽子を拾い上げたのは、通りかかった制服姿の少女です。素通りしても不思議ではないのに、丁寧に帽子のつばを持ち、しゃがんでいた体を起こし、手を伸ばしたところで凝固しました。
目線から察するに、少女はすべてをハッキリとは見ていなかった。時間にすれば束の間の出来事でしたし、辺りを覗き込むような厚かましさとも無縁。男も女も、鞄も雨も、ぼくのことも、人形も、彼女の目には入っていなかったと思います。
ほどなくして凝りをほぐし、学生は
鳥打帽を置いて行きました。真空に閉じられたようなボックスエリアに、あどけない一礼を残して。

「2月の終わりになると、思い出すんだよなぁ」と、ぼくは友人に言いました。「人が石になることがあるなら、あの子みたいな感じかも」
「久々に聞いた、その話」
ああ、話したっけ……。
「でも、直樹」
「ん?」
「帽子拾った学生さ、男の子だって言ってたよ」
 

(2021年2月27日)

連載【 たか歩き 】

▼「たか歩き」バックナンバー
https://www.town.taka.lg.jp/aruki/
多可町地域おこし協力隊・黒川直樹が取材記事や製作・SNS関連のノウハウ、多可町暮らしのあれこれを発信しています。
散策的なエッセイを目指していたのですが、近ごろは走行距離が増加。思いがけない長距離走に酸欠状態が続き、足腰がふらつくので、迷走が近いかもしれません。
取材・撮影・執筆:黒川直樹(多可町地域おこし協力隊(たかおこし隊) )

▼「たかおこ誌」
多可町地域おこし協力隊の広報誌

https://www.town.taka.lg.jp/category_guide/detail/id=28477