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【 たか歩き/019 】声を便りに.1 ~多可町の朗読ボランティアを訪ねて(社会福祉協議会)

地域おこし協力隊がカメラ片手に多可町を歩き、その様子をリポします

鼓膜でつながる世界

こんにちは。たかおこし隊の黒川です。

今回の「たか歩き」はシリーズ企画の第1回。
多可町の朗読ボランティアを訪ね歩きます。


 

記事のポイント

・八千代区・中区・加美区に1つずつ、計3グループが活動中
目の不自由な方に地域情報を届ける役割
録音は数年前にデジタル化
録音メディアはデイジー
(国際基準)も利用
・デイジー規格の概要


 

文字が小さくて……読めない!


私、たかおこし隊の黒川は情報発信を担当。
当連載『たか歩き』や『たかおこ誌』など、写真と文字を組み合わせた媒体を運営しています。
ふいに「読んでますよ」と言われて驚くのですが、先日、こんな呟きが聞こえました。

「でも始めから終わりまで……記事の全部は読めないんですよねえ」

全部は読めない?

呟き主に原因を伺ったところ「目が辛い」と。

「50歳を過ぎて、悲しいですね。長い文章を読むと目がチカチカするんです。だから最後まで読めなくて」

恥ずかしくなりました。

『たか歩き』の文字サイズは、役場のページより120%大きくしています。『たかおこ誌』は多可町の広報誌と同じ1文字10ポイント。一般的なWEBサイト・紙媒体に照らし合わせると、どちらも「大き目サイズ」です。
 
ここに驕りがありました。「文字を大きくしたから読んでもらえるはず」と高をくくり、よりよい工夫を怠った。恥ずかしくなりました。

そんな感想を上司に伝えたところ、「読めない人もいるよなぁ。そういえば町内に朗読ボランティアがいくつかあるけど、取材してみる?」と、助け舟の帆が立ちました。


 

社協さんを訪問 

まず伺ったのは「社会福祉法人 多可町社会福祉協議会」。高齢者や障害者、子どもなど福祉を必要とする町民にサービスを提供する団体です(通称「社協」)。
そんな社協で、朗読ボランティアと利用者の間に入り、サービスをとりまとめるのが地域福祉課のみなさん。
今回はその中から、田尻泰啓さんにお話を伺いました。


 

取材に応じてくれた地域福祉課の田尻泰啓さん


 ―― 今日はインタビューの機会、ありがとうございます。さっそく伺いますが、現在、多可町で活動する朗読ボランティアは、いくつありますか?

八千代区に『草笛の会』、中区は『きんもくせい』、加美区で活動するのが『せせらぎ』。合計3つのグループがあります。
みなさん、2020年のコロナ禍も活動を続けられたんですよ。

 ―― 熱意が伝わってくるエピソードですね! 朗読するテキストはグループで異なりますか?

『広報たか』、『社協だより』、『多可議会だより』を順番に読んでいただきます。
ただ、『多可議会だより』の発行は3ヶ月に一度。空いてしまう月は「オリジナル」とし、グループごとにテキストを決めてもらっています。

 ―― 朗読ボランティアと社協の役割分担を教えてください。

ボランティアグループは朗読の録音や広報の読み(特に名前)を役場に確認します。
社協は録音データの編集とリスナーさん(朗読ボランティアの利用者)への配送が担当です。

 ―― リスナーさんの数はどれくらいですか?

6~7名です。

 ―― 朗読データは誰でも聴けますか?

多可町図書館に音楽CD(MP3)を置いてあり、そちらは聴いてもらえます。
録音はCD、カセットテープ、デイジーの3種類で行ない、リスナーさんが希望されるものをお渡しする形式です。


 ――デイジー? 初めて聞きました。見た目はCDですね。


 

社協が保管するデイジー版の朗読データ



1枚のメディアに50時間以上も録音できたり、頭出しが素早くできたり、CDよりも機能性があります。目次・見出しの呼び出しも簡単です。ただ、デイジーは再生に専用機材が必要です。


 

プレイヤーもデイジー専用だ

※デイジー規格について、当ページ最下部に追加説明を掲載しました。



―― デジタル化の波は朗読ボランティアにまで……!

数年前までテープだけだったんですよ。


 

録音データはテープを含め、大型プラスチックケースにどっさり



 ―― ということは、ラジカセとマイクで一発撮り……?

間違えたときの修正は大変そうでした(笑)

 ―― デジタルならいくらでも処理できますね。

ただ、間違えた箇所を言い直すだけだと、流れに違和感が出るみたいで。

 ―― ああ、なるほど……

グループさんが創意工夫を重ねながら、リスナーさんに
朗読を届けてくれています。
成り立ちや雰囲気も違うので、ぜひ、お話を伺ってみてください。

 

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というわけで田尻さんにご調整いただき、2021年1月の上旬にグループ訪問を開始。
明日から3回に分け、各グループの活動と体験談をご紹介します。


デイジー(DAISY)規格

視覚障害者向けに開発されたデジタル録音図書の国際標準規格。現在は難読症者や学習障碍者、高齢者など「テキストの通読」が難しい人に幅広く活用される。録音図書のほか、文字で構成された「テキストDAISY」、録音・文字を併せた「マルチメディアDAISY」がある。

▼参考ページ
ECH-MAG
テクの雑学 第182回 電子書籍の国際標準規格 ~DAISYを知る~

ENJOY DAISY
DAISYとは

全国バリアフリー旅行情報
デイジー規格による観光地の情報



 

(2021年2月2日)

連載【 たか歩き 】

▼「たか歩き」バックナンバー
https://www.town.taka.lg.jp/aruki/
取材・撮影・執筆:黒川直樹(多可町地域おこし協力隊(たかおこし隊) )

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